ページ

ラベル design の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル design の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017/10/21

サービスデザインについて ーTakram Podcastメモ書き

いつも聞いているTakram Podcast。佐々木康裕さんのService Design 基礎 #01が非常に面白かったので、聞きながらメモをとった。駄文だが、自分のために記録。誰かの参考になれば。
この話のベースには、佐々木さんのこのツイートの図が理解しやすかった。

イントロ

apple store 1平方メートルの売上高、ハイブランドに比べてダントツ1位。
・その差をつけているのは「サービスデザイン」

サービスデザインとは?

・日本ではおもてなしの文脈でとりあげられがち。お辞儀の角度、丁寧な言葉遣い、服装など・・・
・本来はシステマチックかつ包括的なもの
・人を支える設備、オペレーション、ITシステム、内装すべて対象
・サービスを考えましょう=おもてなしを考えましょう
UXとの違い
・フロントエンドに立つ人のふるまいだけでなく、バックエンドの体験のデザインを考える

サービスデザインの3階層

1:フロントエンドで気持ちのいい体験(UX
2:従業員がここちのいいサービスができる
3:それを支えるシステム

辞書的な定義

・サービスデザインとは、ユーザー体験、サービス提供の仕組み、事業モデルを一貫してみなす方法論、人もの場所との相互作用を横断的に設計するデザイン分野
・既存のサービスの改善だけではなく、あたらしいサービスの開発、事業モデルの再編、組織の再編まで拡大されている
・科学的なアプローチ

サービスデザインの原則

  1. ユーザー中心であること。サービスとはユーザーの目線
  2. ホリスティック。ユーザーはサービス全体の生態系のなかの一人のアクター。レストランで言えばホール担当、経営者も含む
  3. 共創。すべての関係者(アクター)がサービスデザインに関わる

アクターを洗い出す
複数のアクターがフラットにでてくることが重用

サービスデザインの歴史

1980年代に始まった学問
EUの大学でデザイン教育のなかで始まった
・イギリスに「サービスデザインコンサルティングファーム」ができる Livework 、Engine Service Designなど
・イギリスでは公的機関の記入フォームがサービスデザインコンサルティングファームによって設計されている事例がある。
・行政まで考え方が浸透しているのはなぜ?
・イギリスでは国全体の取り組みにしていく必要があるということでロビー活動があった
・サービスデザインは行政サービスと関係が深い。大学と教育システム。
・大学。学生中心。行政機関、教育機関、先生、など。全員が関わる。サービスデザインと教育機関は親和性が高い
・歴史は浅いが、もともとは小売業界がメイン。
・マクドナルドのCEOの映画『ファウンダー』はサービスデザインの典型映画。
・オペレーションのデザイン、売り上げ、顧客満足度の向上を分けずにセットでやる
・その後は大規模設備、空港など。その後、行政へと広がっている。

サービスデザインの活躍の仕方

  1. 既存のサービスの改善
  2. 会社のオペレーション全体の改善(どうやって厨房システムを作るか、不動産取得の仕方をどうするか、会計のやり方をどうするか)
  3. サービスそのものを0から作り出す
新しい事業が生まれたとき、「新しいサービスがデザインされた」というより「新しいプロダクトが生まれた」ということを考えられがち。
マクドナルドという新しいハンバーガーショップが出来ました、というが、実態はその背後にあるオペレーションも含めて作っている。
サービスデザインは名脇役。

ヒューストン空港で起きたこと

・空港はいろんなところに行列
・バッゲージクレーム(荷物をピックアップする場所)での苦情が極端に多い
・いつまで待たせるんだ!
・空港が頑張って15分待つところを12分にしたが減らない
・ファームは「待ち時間とはなんぞや」と考えた
・「認知的な待ち時間」と「リアルな待ち時間」を分けた
・歩いていると、待っていると感じさせない
・荷物の到着場まで遠回りさせるようにルートを設計。実質は15分かけているが、認知的な待ち時間は3分に減った=クレームが減った。

サービスデザインが生まれた時代背景は?

・プロダクトで差をつけられなくなってきた
・ブランディングで差別化するのも難しい
・どう自分の会社のオファリングを差別化するか、というと、サービスで差別化する。80年代にその機運が高まる。

最近は

・高級ホテル
・銀行
・小売店/スーパー でその事例が光る

・自分の家でルーティン消費しているものの物理的な場所の近くに置いておくと、すぐオーダーする
・自分たちで開発しようとするとかなり難しい。ボタンのデザインにこだわっちゃう。
・ボタンのプロダクト自体はしょぼくていい。サービスの全体を考える必要がある。
・ビジネスとしてラッピングして提供する
  1. フロントエンド側。顧客体験としての「ワンクリック」。パソコンが使えないおじいちゃんや子どもでも在庫がなくなっていれば注文できる
  2. 「ワンクリック」された後、アマゾンの社内での配送までのオペレーション
  3. ビジネス戦略として「人のルーティン消費」をどう取り込むか

まとめ

・銀行のローンなど「仕組み作りました」的なものが多い
・「わかりにくさ」もサービスデザインの特徴
・いろんな関わるアクターの体験を改善することが必要だから「わかりにくい」
・いい感じのUXは作れちゃうけど、オペレーションに落としこむ+組織をつくることができないと持続しない。そういうリアリティに立脚するのがサービスデザインである。
・プロダクトの深堀は他の人に任せて、サービスデザイナーは背景にあるオペレーションやビジネスモデルを深めることができるか。

=========


考えたこと

・自分のチームを振り返ってみても、バックエンド側が滑らかだとは言い難い。そのガタつきがフロントエンドに現れてしまうと、サービス自体の質が低下する。

・「ワークショップデザイン」とは、体験の核となるコンセプトを参加者が認知しやすい言語、時間、空間に翻訳するスキルだが、その範囲をより拡大し、ビジネスモデルを基盤にしたものが「サービスデザイン」といえそう。(ワークショップデザインの基盤は体験学習の理論)

・フロントエンドからバックエンドまで、アクターの洗い出しをするだけでまずは全体像が見えてくる感じがする。アクターの配置を明確にすること、いきなり全部やろうとせず、小さな範囲の関係性の改善を積み重ねて、徐々に全体を網羅していくことで、推進できそう。

もっと知りたいこと

・既存のサービスを分析する手法
・佐々木さんのいう「財務諸表の読み方」って一体…うとすぎて恥ずかしいが、知りたい。









2016/07/04

トラブル、建築、暮らし ーシンポジウム「『犬のための建築』をめぐって」を聴いた

先月から引っ越しをして一人暮らしを始めた。28歳で初めての一人暮らしという恥ずかしい感じではあるのだが、駅から少し遠いけれどリビングと寝室を分けて使えるぐらいの感じで、日当たりがとにかくいい。飲みに行く予定がないときは料理も作っているし、掃除も洗濯も、いまのところ問題なくできている。


暮らしていると、生ゴミの臭いが気になったり、日当たりがいいがゆえに部屋に熱がこもってしまったり、小さい問題が起こる。柔軟剤の匂いがなかなか気に入らなかったり、新しい炊飯器のご飯がいつもちょっと固めになってしまったり。これまで実家暮らしだったので、こういう小さい問題は家族が気にならないようにしてくれていたのだということを思い知る。だが、それを細かくケアしていくことで生活が楽しくなっていく。(いろいろ物を買いたくなるので出費はかさむが


これまでは家事をしながら好きに音楽を流したり、ラジオを聴いたりすることができなかったけれど、今はそれができる。今まではTBSラジオのPodcastで「session22」とか「ウィークエンドシャッフル」とか聞いていたのだけど、TBSラジオのPodcast7月にはいって終了してしまい、それができなくなってしまったので、最近ハマっているのは「TOTObunka」というチャンネル。TOTO出版で企画されたいろんな建築家の講演が無料で聞けるので、これを聞いている。はじめに聞いたのはこの「犬のための建築をめぐって」という3年前のシンポジウム。

原研哉さんが中心になって立ち上げた「犬のための建築 ARCHITECTURE FOR DOGS 」というプロジェクトについてのシンポジウムで、犬と建築の話だけでなく、建築家がマカロニを設計するという考え方の話や、2013年の「HOUSE VISION」の話もでてきて、原研哉さんという人のスタンスがよく分かる内容。著書『デザインのデザイン 』は高校生の頃に読んだのもあったがインパクトの大きな本だったし、これまでに何度も読み返している。原研哉さんの仕事ぶりは、10年経てさらに進化してる。

「建築というものは、快適に暮らすことだけではなく、抱え込んだトラブルそれ自体が人間を元気にする」というのはこの中で話題になっていて面白いなぁと思った言葉。ぼくが借りたアパートは、もちろん快適に暮らすように設計されているし、現にいまのところはとても快適だ。半分冗談で言っていたようなところはあるのだが、原研哉さんが言っているのは、名だたる建築家が設計した家に暮らす人のことで、「コンクリートむき出しの地下室はジメジメして湿気て大変で、まるで象を飼っているようだというのだが、そういうトラブルを抱えながら嬉々として暮らしている」という。そうやって"建築と付き合う"ことが、人を元気にするんじゃないか、ということだった。

ぼくもなんとなく1ヶ月ぐらい暮らしてみて思うのは、こういうトラブルに対応する手法のなかに、様々な知恵が生きていることだ。大きめのゴザをつかって日光を遮ることで部屋の温度をさげること、シャワーをしたあとに軽く冷水を浴室に撒いておくと浴室の温度が下がってカビにくいこと、生ぐさくならないためのシンクの掃除の仕方などなど、暮らしてみて見えてくるディティールがたくさんあって、ああこういう日常的な実践の中にデザインがあるのだなぁと思う。

ぼくの美的センスがポンコツでクタクタなので、こういったシンポジウムを聴いたり展示を見たりしてもセンスがよくなることはこれまでなかったのだが、ポンコツならポンコツなりに実践できる日常のデザインというものがありそうだ、と、家事をしながら音声を聞きながら思った。


ちなみに、今年の夏に「HOUSE VISION」の新しい展覧会があるみたい。三越伊勢丹やairbnbの名前が並んでいて、気になる!http://house-vision.jp/exhibition/