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2015/09/05

わからないリアリティ、めくったりひっくり返したり

目の回るような忙しさだった夏が過ぎようとしていて、日の落ちるのも早くなったし、ひんやりした風が吹いて長袖を着るようにもなってきた。夏の企画も一息ついて、次なる担当企画は今月末と12月。その間も毎日ワークショップである。年間で20近くの企画を作らなきゃいけない、って厳しいことかもしれないけど、企画屋としては毎日酔っ払うような心地よさである。


さて先月末から0〜2歳の子も参加できる企画が始まった。託児ではないので保護者の人にも入ってもらうんだけど、そこで思ったことが2つある。

ひとつはお母さんたちとの会話が日々面白いということ。初対面の人に自分のこともろくに紹介しないでも、子どもたちの遊びの様子を見ていたら会話がぽつぽつと始まっていく。

そんななかでお母さんたちがワークショップに何を求めているのか、ってことを日々考える。言語や知能の発達の促進なのか、子どもの溜まったエネルギーの発散なのか、ほんのちょっと一息つきたい、という気持ちなのか、とか。

とはいえ、ぼくは結婚も育児も経験ないし、できたとしても妊娠も出産も一生経験できない。つまり自分は母にはおよそなれないし、「お母さんの立場になってみて考える」ということが、絶望的にできない。多少の想像はできるかもしれないけど、およそリアリティには到達し得ない。絶望的にわからないリアリティを前に、頓珍漢な想像しかできないかもしれないけど、その頓珍漢さから何か面白いことが思い浮かぶかもしれない。



あとほかにも興味深いことはいくつもあるけれど、幼児の子たちを見ていてとくに面白いと思うのは「おもちゃで遊ぶのが好きじゃない」っていう感じの子だ。1歳から2歳くらいで、言葉を少しずつ話し始めてて、歩くのも上手になってきているくらいの子たち。「こっちでおもちゃで遊ぼう」と誘っても、見向きもしないで、イスや机や引き出しの扉に関心をもつ。ティッシュやトイレットペーパーも大好きだという。

オープンエンドな、多様な遊び方のできるおもちゃはまるで信頼できる話し相手のようで、いろんな言葉で子どもに話しかけるし、子どもの話をよく聞く。

その一方で、既成のおもちゃは実用性と直結しない。おもちゃに魅力を感じない子は、鍵や引き出しや机などの実社会で使われているものをおもちゃにするのが楽しい様。

そういう子は柵があれば乗り越えたくなるし、穴があればほじくりたくなる。めくれたカーペットをひっくり返したくなる。目の前のおもちゃの言うことを聞いて遊ぶより、自分がいる空間それ自体ををめくったりひっくり返したりしたい!という欲望なのだろうか。

そうなると、ワークショップを作る側としてはめくったりひっくり返したりできる空間を作らねば、と思う。例えば、全部食べられる「お菓子の家」みたいに、丸ごと遊べる/食べ尽くせる空間だったら、そういう子たちはどんなエッジを探るんだろう。そういういたちごっこは楽しそうだし、子どもとワークショップデザイナーの相乗効果だよなーとか。

繰り返す、めくる、ひっくり返す、ほじくる、歩き回る、など、1歳児のイタズラアクションをリストアップして研究したら新しい企画できそう。

はぁ。日々の実践の中で思ってることをこうしてがーっと文章にしてみるとポーッとしてスッキリするものだ。そしたらまた明日。