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2011/12/16

記録の生成、経験と環境

アートプロジェクトのドキュメントのあり方についてはずぅーっと考え続けているのですが、ぼくの場合、児童館の事業として面白いものであることと、アーティストの作品の図録として使えることを両立する必要があります。ドキュメントをつくる視点をどこにおいて活動を見るか。

Nadegata Instant Partyの《24 OUR TELEVISION》の記録集は、ナデガタの活動の仕組みを端的に伝える、すごくクリアなドキュメントになっていて、どんな経緯でできていったのか、ACACの服部浩之さんとスカイプでお話を聞きました。

プロジェクトの期間中から、ドキュメントのことはかなり意識していたそうです。盛り上がった活動を、「こんな楽しいことをしましたよ」みたいなものにするのではなく、外側からの批評があり、英訳がついていたり、作品としての紹介を可能にするための工夫をこらしていったとのこと。 《24 OUR TELEVISION》の活動の実施中は服部さんがACACのブログをまめに更新していたことと、プロジェクトメンバーだけのSNSがあり、ユーザーはかなり頻繁に投稿されていて、それ自体がプロジェクトの記録を生成していました。こうした記録を再構築して、現在のような本がつくられています。


《24 OUR TELEVISION》のドキュメントブック。〈ライブ〉〈プロセス〉〈ドキュメント〉の3層構造で本が構成されている。この本自体がひとつの作品になっている。

当然だけど、このドキュメントは服部さんがどんな視点でこの企画をやっていたのかということが色濃く反映されています。青森に移動してからしばらくは教育普及プログラムを担当されていたこと、ACACに作品の保管機能がないことなどの経験や環境を活かすことで、参加型でなおかつ形に残らないプロジェクト型の作品が生まれていると服部さんは言います。このあたりの「キュレーター」と「エデュケーター」の中間的な仕事ぶりは、とても参考になるわけです。

のんびりと2時間半ぐらいおしゃべりをしてしまったわけですが、そのなかでたくさんのひらめきがあり、いい時間でした!服部さん、ありがとうございました。




2011/12/11

ゲームの作り手、プレイヤー

今日の夜はジョギング。8km 36分30秒。最近、走った距離や消費カロリーなどを記録してくれる「NIKE +」というサービスを使っています。iPhoneとセンサーを同期して、距離やペースを測ってくれる。

iPhone「現在1km4分50秒ペース」
おれ「やべっ!ペースあげよう」

みたいな。とか音楽をかけながら、ペースを確認しながら走れるからいい緊張感をもって走れるわけです。一定の走行距離を走るとレベルアップしたり、「12週間後に10kmが楽に走れる様になるトレーニングメニュー」を作ってくれたりして、ある課題をクリアしながら楽しみながら体を鍛えることができる。さらには「365日間で誰が最長距離を走れるか!?」というコンペティションを自分でつくったりもできるわけです。

最近流行している「ゲーミフィケーション」の事例の1つなわけですが、シューズやウェアーなどの商品との連動や、市民マラソン大会との連動など、これがまたうまくできている。NIKE +というゲームの仕組みに、いろんな方法で参入できちゃう。

裏を返せば、これはネットを介した相互監視システムの事例でもある。開かれたゲームの世界が現実を動かしていくし、調整している。本当に「ゲームばっかしてないで!」みたいな説教文句が意味を成さない世界になってきた感じがあります。誰もがゲームのプレイヤーであり、ゲーム自体の作り手にもなれてしまう。これは面白いですね。

皆既月食、キュレーター

皆既月食を見ながら、色々考えてしまいました。太陽の光を浴びた地球の影が、月を覆っていく過程は、月、地球、太陽の位相を体感する一大スペクタクルでした。

今日は久しぶりの大学の同級生と会って、「坊主バー」というすごく素敵で変なバーに飲みにいったのです。その友人から「キュレーターの仕事に興味がある」と言っていて、わお!いいね!とか思っていたのだけど、どうしたらキュレーターになれるのか、改めて疑問に思いました。
※こんな本もある。「キュレーターになる!アートを世に出す表現者

「美術館や博物館に就職する」それも1つの道だけど、いまはそれが唯一の正解ではない。美術や文芸品を取り扱うだけでなく、最近では「キュレーション」は「情報を収集し、整理する」という意味のマーケティング用語としても使われています。
アートを取り扱う場合は、もちろん美術やその他の歴史の知識・専門性は必要だけど、とにかく足を使って情報を集め、編集する、公開する場をつくっていく。その実践の積み重ねの向こうで、やがてキュレーターとして周りの人に認められていくのだと思います。

ぼくもまだまだ仮免。実践の場をいろんな人に与えてもらえていることに、感謝をしています。とにかく実践は楽しいしハラハラする。自分が今できる範囲のことを、毎回はみ出してチャレンジしているせいで擦り傷だらけだが、そのドライブ感はたまらない。ものすごくちっちゃいことでも、やりたいこととできることは誰にでもあるはずなので、やっちゃえばいいと思います。できちゃう時代だからこそ。