大泉学園のスターバックスで珈琲を飲みながら論文を進めていた。関係性のモデルとして以前から考えていた「向き合う」「寄り添う」という2つのモデルを文章化できたことに少し満足しつつ、少し早めの時間に店を出てポラン書房に行くことにした。
奥さんと会話をすると25日に落語の会をやるらしく、クリスマスなのになんで?とか話したり、最近の活動のことを少し話したり、そんなことをしながらお店の中をめぐる。この日は最高気温が23度という異常気象な日だったわけだが、店先の特集コーナーには12月を象徴する絵本が沢山並んでいて懐かしい気持ちになった。ポーランドの仕掛け絵本と『考現学入門』を購入して店をあとにした。
買えなかったエンデ全集に後ろ髪を引かれつつ、電車に乗って中村橋に移動。おジョーと待ち合わせをして、恵比寿の写真美術館で開催中の『ラヴズ・ボディ』の招待券をもらった。二人で中古ゲームショップに行って、DSのコーナーに並ぶゲームについてあーだこーだ言いながら、あんどーなつと待ち合わせの18時まで、時間をつぶす。
おジョーと別れてあんどーなつと落ち合う。「トロッコ列車」という行きつけのコジャレた居酒屋に入り、ビール2つとカキフライと豚の角煮を注文した。ここの店員さんは、シャイなんだけど明るく振舞うことを精一杯やっている、感じのいい人だ。少しだけ高めなのが難点だが、料理は美味しい。
疲れ気味のあんどーなつと飲みながら、先日のオープンミーティングのことを話した。おもむろにカバンから封筒を取り出し、
「一通だけ後から届いたんだよ。西大泉児童館の秋山館長から。」
と、アンケートを渡してくれてた。秋山さんはぼくが児童館のリサーチを始めた2007年にかばちゃんの相方として職員をしていて、次の年に西大泉児童館の館長になった女性。秋山さんはそれ以前にも西大泉で職員としてかばちゃんと組んでいて、かばちゃんが移動してその後相方を務めたのがあんどーなつだった。
そんな秋山さんのアンケートからは、あの場を面白がっていたことがひしひしと伝わってくる。なんだか分からないけど、奇妙に高揚した感じがそのふであとから伺うことが出来た。
「あの場所で、職員の価値観ではできないことができるかも…っていうふうに、胸がざわついた人たちがたくさんいるとおもうんだよ。その空気を感じた」
と、あんどーなつ。
その後Nadegata Instant Partyの話になる。巻き込む対象は、しげじゃないんじゃないか?と話したり。「しげはもうスタッフだから。中村児童館の職員だからね。風雅とかいいんじゃないか。」あんどーなつは風雅をしきりに押していた。ぼくはあいつのこと、廊下とかではふざけるけどステージ上では恥ずかしがって出来なくなるタイプかと思っていたのだがそうではないらしい。パフォーマンスするのが大好きで、放っておいたらずぅーっとネタをやってるようなタイプなんだって。
ぼくは、しげじゃないとしたら、ひろしやたくやなんじゃないか?という。ひろしはむちゃくちゃ頭がキレるし、中村中出身じゃないから、また別のネットワークを持っている。たくやは優しくて昔からの馴染み。あるいは野田さんが力を発揮して、女子たちをそそのかすとか、そんなふうにナデガタが中高生をどんなふうにいじるのか、いろんなパターンを想像して楽しんでいた。
「ナデガタ、特に中崎くんにまだ「職員」としか思われていない気がして、オレはもっと話がしたいんだよ。基本的に彼らがどんなにヤバいことをしようが受け入れるつもりだし、あんまりやばかったらそりゃぁストップかけるしさ。山城くんも中崎くんも、なんだか躊躇してるんじゃない?」
「オープンミーティングの時だって、「大人の遊びしてみぃひん?」っていう呼びかけに、奴らは一瞬エロいこと考えたわけさ。地域の人達だって、エロいこと妄想してざわめき立つ奴らみて、「全くこの子たちは」ぐらいにしか思わないでしょ。児童館にエロいこと持ち込むぐらいの、そのぐらいのことしてもいいと思うんだよ。おれとかちえちゃんが「ちょ、ちょっと、ここは児童館だから!」って突っ込む演技するからさ。そのぐらいでいいのに、山城くんは「っていうのは<仕掛ける側>になろう、っていう意味で」ってフォローしちゃった。もっと悪ふざけしていいのに。」
たしかに、山城さんも中崎さんも躊躇がある気がする。なんだか『24 OUR TELEVISION』以降、少しずつ毒が抜けてきた気がするのだ。やっぱり美術館が舞台になると、毒素の強いことができるのかなぁ?アートの制度に守られたところのほうが、彼らは力を発揮するのかなぁ。
「今年の2月のナデガタのプラン発表は徹底的にふざけようね。正装してさ、プレスもたくさん呼んで、「2011年のプランが決まりました。やってみなければわかりません」みたいな、何も決まってないのをポジティブに行ったりしてさ、その後の宴会でしげが泣いたりして、「ほんとやってよかったです!」みたいな盛り上がり見せちゃって、それで実は何も決まってない、がーん…みたいな感じとかさ、面白いじゃん。」
たしかに面白い。でも、児童館っていう場所はすべてが遊びになってしまう。ナデガタはこれまで、遊んじゃいけない場所で遊んでたから面白かったのだ。遊んでいい場所で遊んでも面白くない。例えば、児童館という遊びのための場所で、ガチなことをする。ホームレスの宿にするとか、なんかそういうガチなことしたら面白いんじゃないかとも話した。
なんだか安藤さんとたくさん共有できた気がする。来年、24 OUR TELEVISIONを超える、ガツーンと強烈な作品を作ってほしい。
「ついぞびっくりしたことがない人間なんだよ。ナデガタはおれのことびっくりさせてくれるんじゃないかって、本当に楽しみなんだ」
それはぼくも楽しみだ。